第15話 その場しのぎ
「その場しのぎ」という言葉があります。
意味は今の状況に対処し、問題を乗りきることです。
しかし、その方法は様々です。
ある仏師さんから次のような話を聞きました。
仏像を修理するとき二通 りの見積もりをします。
一つは根本からじっくりと直す方法。
もう一つは、とりあえず見える部分を直す方法です。
費用は二倍以上も違いますが、寿命に三倍も四倍もの差が出ます。
仏師さんの立場から「これから何百年も拝む仏さまなのですから。」と説明しますが、大抵はとりあえずの修理になるそうです。
ある年輩のご夫婦の家にお参りしたときのことです、
その家のご本尊は古く立派でしたが、激しく痛んでいました。
修理には費用が掛かることですから、私は「修理を。」と申すことに迷いました。
お勤めが終わり、思い切って話してみました。
するとご夫婦は「私達もずいぶん悩んどった。」と大喜びで根本からの修理をなされました。
私が失礼を承知で「費用が大変なのではないですか?」と尋ねますと、ご夫婦は「そりゃあ大変じゃけど、仏さんが居るから私らが居るんじゃし、今、ちゃーんと直しておけば子供達も大丈夫じゃろ。お金を残すのもええけど、本尊さんに元気な姿になってもらって、この家をしっかり守って欲しいけんなあ。」
と目を細めて言いました。
お大師さまのお言葉に「物の荒廃は必ず人による」とあります。
物事の隆盛や衰退は必ずそれを行う人の心によるという意味です。
今なすことはこの先どうなることなのか。
我が都合や満足だけでは先々は滅んでしまいます。
ご先祖の私達を想う心で今の私があり、今の私達の心が資損を育んでいくのです。
お大師さまの『いのちを生かす』ということは、永遠に続くいのちを「その場しのぎ」ではなく、先をしっかりとみつめて、未来に生かすことなのです。
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