第1話 いのちを生かそう
『行い(すること)・言葉(言うこと)・心(思うこと)』この3つを正しく働かせることによって「人間は生きたままの姿で仏に成ることが出来る=即身成仏(そくしんじょうぶつ)」とお大師さまは説かれています。
その中に細かな決まり事として、十善戒(じゅうぜんかい)があります。
ですから、真言宗の信者さんはお勤めの中で必ず、 十善戒をお唱えします。
その一番最初が『不殺生・ふせっしょう』です。
これは直訳すると「生き物の命を奪わない、殺さない」ということになります。
しかし、日常生活のの中で意識して多くの生き物の命を奪っているか?と振り返ると、『不悪口・悪口を言うな』など他の決まりごとのほうが守れていないのではないでしょうか?
もちろん、小さな生き物や肉や魚を食べる私達は多くの命を頂いて生きています。
しかし、一番最初に説かれているということは他にも深い意味があるのではないでしょうか?
実はこのお大師さまの説かれる『不殺生・ふせっしょう』には生き物のだけではなく、さまざまなのもが含まれているのです。
例えば『時間』。
私達は今日出来ないことを明日明後日と延ばしてしまいます。
今しないといけないことも自分の都合で勝手に延ばしてしまいます。
また、他人の時間を殺してしまうこともしばしばあるのではないでしょうか?
人がしていることの邪魔をしてしまう、無意識であっても言い訳にはなりません。(歩いていて無意識のうちに地面 の小動物を踏み殺しているのと同じこと。)
また、相手の『立場』を殺していないかということも含まれます。
例えば、相手は精一杯の力でがんばっている。
そこへ自分が出来るからといって出しゃばる。
そうすることによって相手の立場は殺されてしまう。
(小さな子供の話を聞かない母親。高齢者の意見を聞かない若者。同僚の足を引っ張るなど。)
こう考えてみると思い当たることがあるのではないでしょうか?
お大師さまは「生かせいのち」という信念をもって、教化されています。
さまざまな命をいただき、生かされている私達。
そして、今の時を生かし、相手を生かすことが大切なのです。
『不殺生・ふせっしょう』にはこのような深い意味があるのです。 |